SIer – 人員リソース計画のアンチパターン

SI 業界に限らず、事業にどのように人員を配置するかというのは、ビジネスの推進上とても重要な計画の要素です。

特に SI 業界においては、労働による人月単価が収入の多くを占めることから、人員計画による業務効率が収益性に寄与する度合いは、より大きなものとなります。
例えパッケージを扱う事業であったとしても、多くのカスタマイズを伴うことが多く、人月単価による収入のウェイトが大きく同じような話になります。

この記事では、人員リソース計画を検討するうえでの押さえておくべきポイントを解説します。

目次

人員リソース計画のポイント

ベースとなる考え方として、人員リソースを計画する際には次の2つの観点で最適化することが目的となります。

  • 事業を成長させるための適切なリソース配分であること
  • 事業の各業務を効率的に推進できること

これを実現するために、以下に解説する考え方で計画を組み立てるのが良いと思います。
アンチパターンを列挙しつつ、どういった考え方で計画するのが良いかまとめます。

短期目線のビジネスを優先しない

SIer における人員計画でやってしまいがちなのが、短期ビジネスへの配置を優先してしまうことです。

ここでいう、長期・短期とは次のようなビジネスを意味します。

  • 短期:人員の稼働が売上に直結するようなビジネス
  • 長期:将来的な売り上げを見込んだ資産やサービスの開発

短期ビジネスを優先すると

短期の方が業務や課題をイメージしやすいところがあり、SI 業界での人員配置は短期ビジネスへのリソースが優先されがちです。

しかし、継続的な事業成長を考えたときに、これは絶対にやってはいけません。
短期ビジネスの人員配置を最初に考えると、必然的に長期ビジネスには余剰人材が割り当てられることになります。

そうなると、長期ビジネスにリソース自体は割り当てされるものの、優秀な人材は短期ビジネスに偏ってしまい、事業の長期的な成長が滞ってしまうことになります。

長期・短期、バランスよく人員を配分することが肝要です。

AsIs の体制を計画の起点にしない

もうひとつありがちなのが、長期ビジネスへのリソース配分がそもそも少なくなってしまうケースです。

これも短期ビジネスを優先する場合の悪影響に類似しますが、短期のリソース配分を所与として計画を作ってしまうと、長期に向けた配分は余剰として定義されることになります。
とすると、この配分はどうしても小さくなってしまいがちです。

ToBe をイメージせずに、AsIs の体制を起点として考えてしまうと、必ずこういった問題のある計画ができてしまいます。

何事にも共通する話ではありますが、リソース計画の ToBe をまず作成するというのはとても重要です。

人員リソースの検討順番

これまでの話を総合して、次のようなステップでリソースを検討するべきです。

  • 人員リソースの ToBe 計画を作成する
    • 短期、長期の比率を決定する
    • それぞれの事業領域への人員配置を決める。
  • 現行体制とのギャップを分析し、ローテーション計画を作成する。

現在は情報系ビジネスに関わる変革が大きいところもあり、SIer が生き残っていくためには長期ビジネスの成長が必須です。
これを実現するために、正しいステップで人員計画を作成することが重要です。

工数を細分化するような兼務配置をしない

もうひとつ、詳細の配置を検討する際のアンチパターンがあります。

SI 業界では、ひとりの工数(リソース)を細分化して、複数のプロジェクトに従事するようなケースが見受けられます。
優秀な人を複数のプロジェクトに従事させることで、一見、人材を有効活用しているような印象があるかもしれませんが、総合的にはデメリットが大きいところがあります。

  • そもそも効率が悪い。複数のプロジェクトで思考が分断されてしまい、パフォーマンスの限界がある。
  • 複数のプロジェクトに均等な品質で従事するのが難しい。優先しづらいものは品質が著しく低下しがち。

特に、短期と長期のプロジェクトを一人に割り当てるようなケースは最悪です。
長期的なビジネスを優先して取り組みができる人は、そうそういません。
このようなケースでは往々にして、短期側に集中してしまうことになります。

もちろん、組織マネジメントや横断的な品質管理など、複数プロジェクトを前提にした要員も必要です。
こういった要員は、与えられるミッションが横断的なものであるので、複数のプロジェクトに関わることは問題がありません。

より正確な表現としては、ひとりに対して、シナジーのないような全く別の複数のミッションを与えることが NG なものとなります。

こういったリソース配分は、やむを得ない場合の最終手段として考えましょう。
ただただ人材の浪費を発生させているだけですので、早期に解消するべきものになります。

まとめ

将来に向けて事業を成長させるためには、適切な人員配置計画が必須です。

重要なポイントのみ列挙しなおします。

  • AsIs を起点にしない。ToBe が出発点。
  • 長期・短期の配分を決める。
  • 短期ビジネスにリソースを偏重しない。
  • シナジーのないリソース細分化は厳禁。
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