新NISAの投資は、全世界株式か米国株式の二択で考える人が多いと思います。
以前の記事で、新NISAの 1800万円を全世界株式で20年間運用するシミュレーションを紹介しました。
今回の記事では、米国株式の代表的なインデックスである S&P500 での運用シミュレーションを紹介します。
シミュレーションの前提
投資の前提
新NISAへは以下のスキームで投資をする前提とします。
- 毎月10万円を積立投資する。(5年間で 600万円)
- 毎年1月に240万円を一括投資する。(5年間で 1200万円)
- 投資先はすべて、全世界株式の投資信託とする。
- これを5年間継続し、その後売却せずに保有し続ける。
全世界株式シミュレーションの前提と同じで、1800万の枠を最速で使い切るやり方です。
比較パターン
次のようなパターンを比較します。
- 何も投資しない場合(比較基準のため)
- 年利が6%で一定であった場合
- 年利が8%で一定であった場合
- S&P500 の過去の Price Return を再現した場合
- S&P500 の過去の Net Total Return を再現した場合
- S&P500 の過去の Total Return を再現した場合
④~⑥のケースについては後述します。
理論値に最も近いのは⑤の結果になります。
S&P500 について
S&P500 とは、アメリカの S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出している、米国株式の株価指数です。
米国の大型株500社の株価を時価荷重平均で算出した指数となっています。
米国株式のインデックス投資といったときに、最もよく選ばれるインデックスです。
S&P500 には、以下の3種類の指標があります。
指数種別 | 概要 |
---|---|
Price Return | 配当を含まないリターン |
Net Total Return | 課税後配当込みのトータルリターン |
Total Return | 課税前配当込みのトータルリターン |
S&P500 で検索したときに、最も代表的なものは Price Return です。
2023年8月現在、おおよそ 4500 近辺の数値となっている指数です。
一方で、投資信託の値動きに最も近いものは Net Total Return になります。
配当込みなので、Price Return よりも成長率は大きくなります。
Total Return は配当課税が控除されないため、Net Total Return よりもさらに大きな成長率となります。
しかし、投資信託の値動きと比べると、過剰に上回ってしまいます。
S&P500 Net Total Return でのシミュレーション
これまでの話より、シミュレーションとしては Net Total Return を用いるのが適切です。
しかし、この指数は 2009年4月から算出が開始されたものであり、20年のシミュレーションとしては履歴が不十分です。
よって、シミュレーションの妥協案として、次の方式で計算したものを 「⑤ Net Total Return」 シミュレーションとします。
- 2000年~2009年4月までは、Price Return の実績を用いる
- 2009年4月以降は、Net Total Return の実績を用いる
つまり、⑤の Net Total Return より少し上振れした金額が、本来求めたいシミュレーションとなります。
④と⑥は比較の参考として掲載します。
シミュレーション結果
結果のグラフ
結果のグラフは次のようになりました。
シミュレーション期間は最大限伸ばして、22年と6カ月の期間にしました。
なお、USD/JPY の為替の影響は無視しています。
現在は円安に振れていますので、為替影響を考慮すると、収益率がさらに大きくなります。
前述のとおり、グラフで注目すべきは、緑色の Net Total Return です。
これが少し上振れしたものが、本来シミュレーションするべき数値になります。
パターン別の金額推移
各パターンの金額推移は次のようになります。(表の単位は「万円」)
2029年 1月 | 2034年 1月 | 2039年 1月 | 2044年 1月 | 2046年 7月 | |
---|---|---|---|---|---|
① 元本 | 1800 | 1800 | 1800 | 1800 | 1800 |
② 6%運用 | 2142 | 2890 | 3898 | 5258 | 6106 |
③ 8%運用 | 2274 | 3387 | 5047 | 7519 | 9177 |
④ Price Return | 2037 | 2052 | 3335 | 6129 | 7262 |
⑤ Net Total Return | 2037 | 2103 | 3682 | 7256 | 8836 |
⑥ Total Return | 2141 | 2398 | 4334 | 8800 | 10841 |
シミュレーション結果から、おおよそ 6~8% の間に ⑤ Net Total Return が収まっていることがわかります。
全世界株式は 5~7% くらいでしたので、過去実績としては米国株式の方が収益率が高いことがわかります。
⑤ Net Total Return の資産増倍率
1800万を1としたときに、各ポイントで資産がどのくらいの倍率に成長しているかを示します。
元本からの比率 | 2029年 1月 | 2034年 1月 | 2039年 1月 | 2044年 1月 | 2046年 7月 |
---|---|---|---|---|---|
⑤ Net Total Return | 1.13 | 1.16 | 2.05 | 4.03 | 4.91 |
投資開始から20年目の 2044年時点において、4倍もの成長率となっています。
米国株の強さがよくわかる数値です。
投資のリスク
前回のシミュレーションでも後書きにした内容ですが、ここでも掲載しておきます。
このシミュレーションはあくまで過去の再現であり、今後、世界経済が実際にどうなるかは誰にもわかりません。
停滞する可能性もありますし、もちろん経済が後退してしまう可能性もあります。
実際に、シミュレーションの 2032年のタイミングでは、シミュレーションの評価額が一時的に元本を下回っているのがわかります。
これはリーマンショックによる暴落を再現しているためとなります。
こういったリスクがあることは、頭にしっかり植え付けておくことが重要です。
長期投資においては、狼狽売りが最大の敵です。
暴落してもゼロになることはありませんので、貯金の代わりくらいの感覚で投資するのが良いと思います。
もちろん、投資対象がインデックスファンドである場合に限ります。
この記事が、みなさんの投資戦略の参考になれば幸いです。
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