2024年から始まる新 NISA では、最大1800万円の金額を永年非課税で運用することができます。
大きな金額ですので、将来的にどのくらい運用益が見込めるのかは気になるところです。
本記事では、いくつかのパターンで運用益のシミュレーションを行います。
シミュレーションの前提
投資の前提
新NISAへは以下のスキームで投資をする前提とします。
- 毎月10万円を積立投資する。(5年間で 600万円)
- 毎年1月に240万円を一括投資する。(5年間で 1200万円)
- 投資先はすべて、全世界株式の投資信託とする。
- これを5年間継続し、その後売却せずに保有し続ける。
1800万の枠を最速で使い切るやり方です。
比較パターン
次のようなパターンを比較します。
- 何も投資しない場合(比較基準のため)
- 年利が5%で一定であった場合
- 年利が7%で一定であった場合
- 2000年以降の MSCI ACWI と同じ値動きを再現した場合
注意点として、④のケースにおいて、USD/JPY の為替影響を無視しています。
MSCI ACWI について
MSCI ACWI とは、アメリカの MSCI 社が算出している、All Country World Index です。
全世界株式の値動きを表す指標になります。
オルカンの投資信託は、この指標と同じ値動きになることを目標としています。
今回のシミュレーションでは、ACWI の Net 指標を参考にしています。
ACWI には以下の種類があり、オルカン投資信託の値動きには Net が最も近いものとなります。(課税のルールは一致しないので、あくまで目安です)
Index Level | 概要 |
---|---|
Price | 配当を含まないリターン |
Net | 課税後配当込みのトータルリターン |
Gross | 課税前配当込みのトータルリターン |
Net の指標は 2000年末よりトラッキングされており、これをシミュレーションの参考にします。
シミュレーション結果
結果のグラフ
結果のグラフは次のようになりました。
なお、シミュレーション期間は最大限伸ばして、22年と6カ月の期間にしました。
※前述のとおり、④のシミュレーションにおいて、USD/JPY の為替は一定という前提です。
各パターンの金額推移は次のようになります。(表の単位は「万円」)
2029年 1月 | 2034年 1月 | 2039年 1月 | 2044年 1月 | 2046年 7月 | |
---|---|---|---|---|---|
① 元本 | 1800 | 1800 | 1800 | 1800 | 1800 |
② 5%運用 | 2080 | 2670 | 3426 | 4397 | 4981 |
③ 7%運用 | 2207 | 3128 | 4435 | 6287 | 7486 |
④ 過去再現 | 2403 | 2846 | 3824 | 6818 | 7517 |
所感
グラフを見ると、これまでの世界経済は、おおよそ年率 5%~7% のオーダーで成長してきていることがわかります。
ITバブル崩壊やリーマンショックなど、何度かの暴落はあったものの、力強く成長し続けています。
今後も同じような経済成長を仮定すると、20年後には投資金額が 3~4倍に増えることになります。
④の金額推移を、元本に対する比率とすると次のようになります。
元本からの比率 | 2029年 1月 | 2034年 1月 | 2039年 1月 | 2044年 1月 | 2046年 7月 |
---|---|---|---|---|---|
④ 過去再現 | 1.34 | 1.58 | 2.12 | 3.79 | 4.18 |
最初の頃は増加率が弱いですが、期間が長くなるにつれ、増加率が加速していることがわかります。
これが複利の効果であり、NISA 制度ととても相性の良い性質です。
NISA 枠は、途中で利確せずに、長く長く保有し続けることが重要であることが良くわかります。
投資のリスク
一方で、このシミュレーションはあくまで過去の再現であり、今後、世界経済が実際にどうなるかは誰にもわかりません。
停滞する可能性もありますし、もちろん経済が後退してしまう可能性もあります。
実際に、シミュレーションの 2032年のタイミングでは、④の評価額が一時的に元本を下回っているのがわかります。
これはリーマンショックによる暴落を再現しているためとなります。
こういったリスクがあることは、頭にしっかり植え付けておくことが重要です。
長期投資においては、狼狽売りが最大の敵です。
暴落してもゼロになることはありませんので、貯金の代わりくらいの感覚で投資するのが良いと思います。
(もちろん、投資対象がインデックスファンドである場合に限ります)
この記事が、投資戦略に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
<2023/08/30 追記>
S&P500 のシミュレーションも追加しました。
もし興味があれば参考にどうぞ。
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